2022年5月のメッセージ

『 “表現の自由”について思うこと 』

 

 オリンピック出場のアスリートたちなど、有名人へのSNSでの誹謗中傷が話題になるケースが急増しています。一方で<人種差別を煽るようなヘイトスピーチなどが問題視される時もそうですが>、必ず【表現の自由】は憲法で補償されているなどと主張する文化人コメンテーター、法律家、教授などが登場します。しかし、人を傷つける言葉をしかも匿名で投げつけるようなネット上での誹謗やヘイトスピーチ的な発信の仕方を【表現の自由】と言うのは、僕はまったくおかしいと思います。


 ○○ハラスメント、という行為についてもそうです。受け手側がどう思うかで決まるわけですよね。信頼感や共感性で結ばれている中での発言や行為はOK(周囲がとやかく言おうが当事者同士で問題になることはない)、明らかに権力地位の濫用だとか立場の強い方の一方的な要求であれば、NGなわけです。ハラスメントの場合は個人を特定できますが、SNSの場合はほとんどの場合は匿名です。受け手側、被害を受ける側が傷つくこと自体をしてはならない、というのは憲法以前に(人間が1人では生きていけない生物である以上)対人関係の基本的な倫理観というものではないでしょうか。


 世の中ではこの二十数年、通信やコミュニケーション手段において、インターネット抜きに生活することが難しい時代になりました。でも一方で、ツールの進化に哲学、教育、倫理、道徳、そしてとくに法律が追い付いていないのが現状です。≪ネットリテラシー≫ →< コトバンクによると、情報の取捨選択や適切な対応ができること、などを含むネット社会を生きる上での知識・能力全般のこと>とあります。


 僕らの世代は小学校に、子供の二宮金次郎(尊徳)が薪を背負って本を読みながら歩いている像が正面玄関の近くにあり、道徳教育というものがしっかりとありました。<三つ子の魂百まで>とよく言います。育った環境も世代も違う人たちがコミュニケーションを取るツールとしてLINEやインスタグラムなどSNSやネットを利用する時代だからこそ、情報処理ツールのテクニックや知識ではなく原点に立ち返り、日本は倫理や道徳をもっと低年齢時から教育することにもっと国として国家予算を配分して、教育できる人を育てることも含め力を入れるべきではないかと年齢を重ねるとともに思うようになりました。(昨年、渋沢栄一の本を読んで感銘を受け、大河ドラマを観たりして何かと影響を受けています…。)


 家庭での躾が重要なことはもちろんですが、これとて躾ける親が道徳倫理教育を受けていないとハラスメントと同じようなことが起きますよね。
 グローバル時代を生き抜くためにも、日本の四季、そこで育まれた日本人の感性、日本人の繊細さ、やさしさ、しなやかさなど、海外の方からより高評価を受けているような日本の国民性の長所を教え、育てる。それがグローバル時代を生き抜く真の教育ではないかと。正面突破的な腕力や強さ、攻撃性を前面に出す、それは契約社会・裁判社会の欧米には馴染んでも、日本では決して馴染まないのではないかと思うわけです。日本には謝る方が負けではなく「負けるが勝ち」などという言葉もあります。
 一人の人間として、≪ポチッ≫と送信ボタンを押す前に一晩寝かせて、朝一番お日様を浴びながら再考して発信・行動した方が良いと思います。夜中に書いたラブレター(「らぷれたー」ではありません)を朝読み返してみたら恥ずかしくて読めるものではなかった!なんてこともありますしね。生きづらい世を生き易くするための処世術は案外そんなところにあるのではないでしょうか?

代表取締役 樋口繁樹

 

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