新入幕 尊富士の快進撃
大相撲のことは今はニュースのスポーツコーナーで観る程度ですが、小学生の頃は観るのもやるのも好きでしたね。ちょうど<子供の好きなもの巨人・大鵬・卵焼き>と言われた時代の終わりかけ、大鵬引退のニュースが新聞にドカンと出て、北の富士と玉の海が大関から横綱に同時昇進した頃でした。
僕はダンディな深い緑色のまわしを着けた男前横綱、切れ味鋭い右上手投げと外掛けが得意技の北の富士の大ファンでした。当時は『北玉時代』とも呼ばれたのですが、好敵手の玉の海が病気で急逝し一人横綱となってからは、怪我などの要因もあったのでしょう、横綱寿命はそう長くはなく4年ほどで引退しました。
その後は、千代の富士に滅法強かった隆の里、4横綱時代に張り合った怪力大関の魁皇、ここ数年では白鵬の連勝を止めた稀勢の里などのファンでした。
そしてこの3月の大相撲春場所で、一気に脚光を浴びることになったのが、昭和の大横綱大鵬以来の新入幕からの11連勝&110年ぶりの新入幕力士の優勝の快挙を成し遂げた尊(タケル)富士。本人は優勝インタビューで「記録よりも記憶に残りたい」と話していましたが、一発で記憶にも記録にも残る場所となりました。大銀杏を結えないちょんまげ力士の優勝は史上初めてなのだそうです。
14日目の一番で右足首を痛めて車椅子で退場、救急車で病院へ、となればこりゃ千秋楽は無理かな、と普通思いますよね。前日夜、親方からは「無理だろう、力も入らないし…」と言われていて断念しかけていた処、兄弟子の照ノ富士が自室を訪ねてきて、「お前ならやれる。記録はいいからお前は記憶に残せ。最後まで出ることが大事。チャンスは戻ってこないぞ!」と出場を後押しされると、歩けなかったのに立って少し歩けるようになったのだとか。再度親方のもとへ行き「出させてください」と伝え、千秋楽はなんと痛み止めとテーピングで出場して、しかも立会いの変化や引き技を使わずに、押し倒しでの勝利。本当に凄い!の一言に尽きます。
<人生は心一つの置きどころ>とはかの中村天風の言葉ですが、まさにそれを体現したといえる尊富士でした。靭帯の負傷をしっかりと治してもらって来場所以降の尊富士にも乞うご期待!ですね。
代表取締役 樋口繁樹